Attention Please !!

この小説は、いわゆるスレルク設定です。
ルークが今後の未来を知っていたり、性格が原作と異なる部分があります。
それでも良い、むしろバッチ来い!な方のみ、この先へお進みください。


















ここはバチカル城。俺は今、罪人部屋へ続く石畳の階段を降りている。
恐れ多くも、神託の盾騎士団・主席総長が収監されている場所へ向かうために。
まったく、いい気味だ。
内心は置いといて、このままここに閉じ込めておいた方が世界のためか?
まぁ、だからこそわざわざ出向いてやるんだけど。

部屋に入ると、ヴァンは何やら兵士と会話していた。
今までの経緯を聞き出しているのだろう。
やがて兵士が退室し、狭い罪人部屋は俺とヴァンの二人きりになった。

「今ここには私たちしかいない。だから私の言うことを落ち着いて聞いてほしい」

言われなくても冷静だが、敢えて緊張した風に喉をゴクリと飲むフリをして、次の言葉を待つ。

「私の元へ来ないか?神託の盾騎士団の一員として」
「……師匠、何言ってんだよ」

もちろん本心は疑問なんかじゃない。むしろ嘲笑してやりたいのを何とか堪えている。
アンタの元へ行ってどうなるっていうんだっつーの。
アッシュの二の舞にでもなれって?それこそ冗談じゃない。

「お前はアクゼリュス行きを簡単に考えているだろう。
 だが、その役目を果たすことで、お前はキムラスカの飼い犬として一生バチカルに縛り付けられて生きることになる」

……ホント、反吐が出るほど呑気な話だなあ。
街ごと消滅させられるのに比べたら、キムラスカの飼い犬なんてまだマシな方だろ。

「私と共にダアトへ行きたい。―――─幼いお前はそう言った。
 超振動の研究で酷い実験を受けたお前は、この国から逃げたがっていたのだ。
 だから……私がお前をさらった。七年前のあの日に」

アッシュがこの国から逃げたがっていただって?
これほど馬鹿馬鹿しい話もないだろうな。
たった10歳のくせして、幼馴染みにプロポーズまでした奴が?
俺と違って、将来為政者となるために励んできた奴が?
そんな訳あるか。
大体、それじゃ ”居場所を奪われた”って俺を憎む理由が意味を為さなくなるだろうが。
何しろ言葉通りなら、アッシュは自分で居場所を捨てたってことになるんだからな。
うわ、それって単なる憎まれ損じゃん俺。
ま、どっちにしろ矛先が間違ってるのには違いないんだけど。洗脳って怖ぇー。

……などという心の声は封印して、演技過剰気味に驚いてみせる。

「師匠が!?俺を誘拐したのはマルクトじゃなくて師匠だったのか!?」
「今度はしくじったりはしない。私にはお前が必要なのだ」

ヴァンは白々しく、しかし事情を知らぬ者には真摯に聞こえるよう、熱弁を振るう。

何が必要、だ。
”超振動を使える捨て駒” という条件付きのくせに。
他の奴らも、どうせ”記憶を失う前の俺”か公爵子息の地位が必要なだけだし。
”俺” という個人を必要としている奴なんて、結局誰もいないんだな。

ヴァンに勘付かれない程度に溜め息を吐き、演説に感銘を受けた信者みたいにこう言ってやる。

「俺……師匠についてくよ!」
「よし。では行こうか。お前自身の未来を掴み取るために」
「はいっ!」

ただし、それはアンタに押し付けられた運命じゃない。
俺は俺だ。
アンタにも預言にも、誰にも縛られてなんかやらない。
俺を必要としないこんな世界、まとめて滅ぼしてやるよ!




さぁ、騙し合い game の始まりだ!






TEXTへ